WORKSCAPE INNOVATION

働く風景を変えていくジャーナル。それが「WORKSCAPE INNOVATION」です。次世代オフィスのコンセプトの開発・研究に長年携わってこられた岸本章弘氏がお届けします。

No.11 日本のオフィスのこれからを探る その1 2011.12.09 up!

<座談会>紺野登×玉井克彦×神河恭介 進行:橘昌邦

パークオフィスラボでは、オフィス研究の第一人者である岸本章弘氏に、空間の視点を軸に国内外の先進事例を10回に渡り紹介して頂きました。今回は、ビジネスの視点からこれら記事を振り返ると共に、日本のオフィスの向かうべき方向性について、「知識経営」「創造経営」の第一人者で、「儲かるオフィス(日本経済新聞社刊)」の著者でもある多摩大学大学院教授の紺野登さんを囲み、「中野セントラルパーク」のプロジェクト推進室長である東京建物の玉井克彦さん、そして「六本木ヒルズ」等、多様な施設の開発・運営経験を有するPODの神河恭介さんと共にお話を伺いたいと思います。

連載を振り返って ~オフィスと事業モデル~

今回岸本さんと共に取材を進めるにつれ、国内では新しいオフィスの例で挙げられるものが限られていると感じました。海外と比べ企業の意識や研究などに違いがあるのでしょうか。

紺野

  • 紺野登氏

    紺野登氏

20世紀のオフィスは、元々工場管理の延長として生まれてきたという背景があります。「モノづくり」が強かった日本では、オフィス研究はファシリティや経営工学の分野が中心で、経営的視点での研究はあまりなされてきませんでした。ここでは効率化や生産性、つまりコストが課題でした。
未だに『オフィスはコストでしかない』といった意識をお持ちの企業が多いように思います。 しかし、経営にとってオフィスが重要かつ戦略的な資産だということに気づき始めた企業トップも出てきていると思います。

岸本さんの記事にも、企業トップがオフィスづくりを成功に導くための大きな推進力になった例が出てきます。しかし、理解ある企業トップの存在以外にも、うまくいっているオフィスを分析する視点もあって良いように思います。

紺野

日本では伝統的に、『事業がうまくいっているから、会社(オフィス)を
立派にした』と取られがちだったかもしれませんね。(笑)
実際、多くの成功事例についても、なぜうまくいったかということについての
研究はまだまだ不十分かもしれません。
しかしお気づきのとおり、実は成功事例の多くに共通した理由が存在します。
そのひとつは、オフィスがビジネスモデルに適合しているということです。

その適合とはどのようなものか、わかりやすい事例はありますか?

紺野

ユニクロ(ファーストリテイリング)のようなオフィスでは、スタッフが皆立ったり走ったりして仕事しています。この光景を目にして、「年齢層が若いから」や「慌ただしいから」、「元気な会社はいいね」というのは表層的な観察です。
同じような光景は、他のファストファッションビジネスのオフィスでも見られます。アメリカのボルチモア湾岸部にあるアーバンアウトフィッターズのオフィス。元海軍の倉庫をリニューアルしたもので、やはり社員は至る所で動き回っています。
なぜならファストファッションはマーケットの変化を製造・販売に繋ぐまでの期間が極めて短く、幾つものプロセスを順に進めるような一般的な商品開発プロセスではまず間に合いません。
このようなビジネスモデルでは、集約的に協業するようなワークスタイルが求められるのです。よってオフィスは自由にレイアウトでき、多様な動線や接点、交流が生まれる工夫が求められます。つまり、ビジネスモデルとオフィスと働き方は三位一体の関係にあるのです。

  • ユニクロ(ファーストリテイリング)のオフィス風景(第8回記事より)
  • ユニクロ(ファーストリテイリング)のオフィス風景(第8回記事より)
  • ユニクロ(ファーストリテイリング)のオフィス風景(第8回記事より)

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