文および写真=岸本 章弘(ワークスケープ・ラボ代表)
働く人の変化
前回のコラムでは、働き方の変化について説明し、そこに行動と空間のミスマッチが起こり始めていると指摘しました。続いて今回は、オフィスで働く人の変化について考えてみましょう。
さて、かつてのオフィスワーカーの典型的なイメージといえば、サラリーマンとOLでした。新卒から定年までの幅広い世代にわたる男性会社員と、新卒入社後に数年勤めて「寿退社」していく20歳代中心の女性会社員ですね。今日、そんなオフィスワーカーの構成は確実に変化してきています。
まず、男女雇用機会均等法や男女共同参画社会基本法が施行され、「総合職」として働く女性の比率が上がっています。最近では、「ダイバーシティ推進室」といった部署を設置し、社内人材の多様性を高めることを後押しする企業も少しずつ増えています。
文献1:
「正社員時代の終焉-多様な働き手のマネジメント手法を求めて」、
大久保幸夫編著、
リクルートワークス研究所協力、
日経BP社、2006
また一方では、各種の転職情報誌が増えていることからもわかるように、転職や中途採用が一般的になってきています。そして、バブル経済崩壊後の「失われた10年」の間には、新卒採用が抑えられ、中高年サラリーマンのリストラが広がり、派遣社員という雇用形態が浸透しました。こうして、労働市場は流動化・多様化し、今日では「正社員」として一つの会社で定年まで勤めるようなオフィスワーカーは確実に減ってきています。(文献1参照)
さらに、ビジネス環境のグローバル化の波の中で生き残るために、多くの企業が事業の見直しと組織の再編を繰り返すようになりました。経営統合や事業売買のニュースが増え、海外のビジネス現場で通用する人材を獲得するために、海外留学経験者や外国人を積極的に採用する会社の話題を見聞きすることも増えています。
こうして、労働市場の流動化と企業組織の流動化が同時に進んでいます。つまり、会社組織はより多様な人々によって構成されるようになり、しかもその入れ替わりや組み替えの頻度も増えているわけです。