WORKSCAPE INNOVATION

働く風景を変えていくジャーナル。それが「WORKSCAPE INNOVATION」です。次世代オフィスのコンセプトの開発・研究に長年携わってこられた岸本章弘氏がお届けします。

No.11 日本のオフィスのこれからを探る その1 2011.12.09 up!

<座談会>紺野登×玉井克彦×神河恭介 進行:橘昌邦

これからの日本の「新しい働き方」 ~都市との関係性~

玉井

今回の再開発では、大学との連携も視野にいれて街の活性化に取り組みたいと考えています。そういう意味では伸びる都市の素地を整備している段階です。そこに溜まる「知」や「情報」とは具体的にはどのようなものですか?

紺野

ここでいう「情報」とは緩やかな刺激や交流などを伴うもので、デジタル化されたヴァーチャルな情報ではありません。例えば街の中に入って飲み屋などで交わされ、感じるものなどが「リアルな情報」と呼べます。
そのような情報の価値がより認識されると、オフィス立地も変わっていくでしょう。外資系企業が伝統的なオフィス立地から離れオフィスを構えるのは、そのような認識がベースに有ります。
あまり人が歩いていない街は、ビジネスに必要な情報がないといえます。グローバル化という意味では霞ヶ関には外国人はあまり歩いていません。グローバルなビジネスの視点を得るためには、六本木や渋谷など彼らが好むような街で「リアルな情報」を得ることが必要でしょう。

中野は外国人が「住みたい街」になっているようですね。また、クリエイターをはじめとしたフリーエージェントの人たちも、伝統的な立地とは違った指向がありますね。

紺野

企業が企業だけでなく、色々な人とつきあうようになってきています。フリーエージェント的に働く人たちも増えてきていますが、そういう人たちは霞ヶ関のような権威的な場所はあまり好みません。その点、中野はそういう人たちが集まりやすい。そういう人へのアクセスをビジネスモデルに盛り込んでいる企業には、非常に魅力的な場所ではないでしょうか。

玉井

中野セントラルパークには、そういう様々な人たちとの交流を促進するコンベンションホールやランニングステーション、イベントなどができる空地を計画しています。さらに中野区が都市型産業(ICT・コンテンツ産業や文化産業、クリエイティブ産業)の拠点を設置予定です。

紺野

オフィスが都市に向かって開かれていることはとても大事なことです。それにより生まれる企業と企業をつなぐ「場」、あるいは企業と社会をつなぐ「場」というものが、都市のバリューチェーンを形成しているともいえます。
これまでのオフィスはスタンドアローンかつクローズドであり、外部からは孤立していました。空間の利便性中心であり、どこにあっても良かった。しかし、知識型オフィスはオープンで都市のバリューチェーンの中に埋め込まれています。市場があり、市場に供給する色々なものを作っている人がいて、その人たちをサポートしている機能としての企業があり、さらにそれらを支える産業や知的機関、大学などがある。この連鎖の中にうまくオフィスを組み込んでいくことが、21世紀の企業には不可欠だと思います。

  • 公園と隣接する中野セントラルパークの空地ゾーン

    公園と隣接する中野セントラルパークの空地ゾーン

都市のバリューチェーンという考え方は大切ですね。

紺野

中野は、東京という単位で見たとき、東京都心と良好な住宅地の「エッジ」として大きなバリューチェーンのハブになる可能性があると思います。
一方、地元地域のコミュニティも含めた小さなバリューチェーンも重要です。様々な人々が集まり、「知識都市」を形成していくわけです。
そのようなバリューチェーンの中に、オフィスを置いていくのです。そうすると、非常に革新的なオフィス、企業になっていくと思います。

玉井

以前から、中野セントラルパークが無機質な箱ではなく、人と人や企業と企業、企業と社会をやさしく結びつけていく、そんな温かみのある存在になることが出来ればと思っていました。
空地は、企業や人が様々な接点を持てる場にしたいと思っています。そのための運営の仕組みづくりにもトライしたいと思っています。

ビジネスの変化が「新しい働き方」を必要とし、「新しい職場」を創造する。当たり前のようで見落としている視点を頂き、都市と働き方を結びつけるところまで話しは白熱しました。
次回(最終回)は、さらに各人の「新しい働き方」「新しい職場(ワークプレイス)」への思いも含め、スピーディなイノベーションを必要とする21世紀のオフィスの可能性を探ります。

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