<座談会>紺野登×玉井克彦×神河恭介 進行:橘昌邦
これからの日本の「新しい働き方」 ~都市との関係性~
橘
神河恭介氏
取材先探しの過程で、まだまだ「場」を活かしている企業が多くないように思いました。そのような企業が増えるタイミングはいつだろうと思っているのですが、このプロジェクトなどがきっかけになると面白いのではないかと思います。
紺野
経験的には「場」を活かす企業が特定の比率、全体の8%ぐらいになれば普及し始めるでしょう。例えば子供の携帯。3%ぐらいしか持っていないと早いと言われるが、8%を超えると普通になります。若い人の「茶髪」なども同様ですね。
神河
たしかに、現在、新しいオフィスに取り組む企業トップは「変な人」扱いされている状況かもしれません(笑)。
紺野
たしかに(笑)。しかし、今のようなオフィスが登場した20世紀初頭は、
一般的には家や工場が職場ですから、異様に映っていたでしょう。オペ
レーターやホワイトカラーを集め、みんなでタイプライターをたたくという風景は、未来的な空間に見えたはずです。
ところが、今ではそれが普通です。その20世紀型オフィスは、工業型のビジネスモデルにおいては非常に成功しました。しかし、知識型のビジネスモデルに移行した21世紀において、20世紀型オフィスはビジネスにあまり貢献しなくなると思います。
今は少数にすぎないかもしれませんが新しいオフィスづくりをしている企業は業績も伸びています。今後は必然的に知識型、21世紀型のオフィスが普通になっていくと思います。
橘
「新しい働き方」という点では、既に就業時間の自由度が高まり、ネット利用の業務も増えています。そうなると、あえて集まるオフィスの価値とはどのようになるのでしょうか。
紺野
リアルな都市空間との関連性が大きな価値の一つになると思います。
例えばシリコンバレーのように都市の活力を取り込んでいく必要があると思います。シリコンバレーはサンフランシスコの市場と周辺の大学や住宅地、企業などと相互に接する「エッジ(縁)」になっていて、常に活力に満ちている。これらにアクセスできるということが大事です。
玉井
シリコンバレーは先生の著書でも紹介されている「知識都市」の代表例だと思いますが、「知識都市」の要件とはどのようなものでしょうか?
紺野
都市の「リアルな情報」が重要な要件の一つです。そのためには、研究開発や大学などの拠点があること。そしてカフェなどのナレッジワーカーが集まりやすい場が充実していること。それからなんといっても文化的活動があることですね。イベントや飲み屋など、こういうものを集積しているところは知が溜まりやすく、そういう都市を「知識都市」と呼んでいます。
中野も、そういった要素を持っていますね。
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多くの人で賑わう中野サンモール
イベント客で賑わう中野サンプラザ
多様な店が集積する飲み屋街