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先進国と比較し、平均睡眠時間が短い傾向にある日本。社員の心身の健康状態は、企業の生産性や事業成長にかかわる重要な要素のひとつです。とくに睡眠は、健康はもちろん毎日のパフォーマンスのバロメーター。自社の働き方改革を進める上で、ぜひ見ておきたい要素です。

 社員の睡眠にかかわる取り組みとして、「パワーナップ」が注目されています。どのような取り組みなのか、事例とあわせてご紹介します。

パワーナップとは?睡眠が生産性に与える影響

睡眠時間や睡眠の質は、生産性に大きな影響を与えるといわれており、実際に睡眠の質が生産性に影響していると感じている日本人は多くいることがわかっています。

そこで「パワーナップ(積極的仮眠)」という取り組みが注目されています。

睡眠がビジネスに及ぼす影響を調査

ブレインスリーブが行った「睡眠偏差値 調査結果報告 2024」によると、睡眠が生産性に影響を与えていると感じる人は7割もいることがわかっています。

さらに、睡眠の質を4段階のランクに分け、ランク別に経済損失額※1を比較してみると、睡眠の質に課題がある人とそうでない人で年間76万円の差があることもわかっています。

※1: 自身の生産性を0-100%の間で表した際の回答値と、年収を掛け合わせ算出。たとえば年収1000万円の人が、生産性を90%と回答した場合、経済損失額は100万円となる。

 

生産性(経済損失額)と睡眠の関係性 調査結果

 

出典:睡眠偏差値 調査結果報告 2024 | ブレインスリープ (最高の睡眠で、最幸の人生を。)

 

睡眠の質は業務パフォーマンスに影響することから企業の損益にまでつながっており、睡眠と生産性は根強い関係性だということが調査結果から窺えます。

企業の生産性向上につながる「パワーナップ」が注目されている

パワーナップとは、昼過ぎに15〜30分程度の仮眠を取る、いわば昼寝のこと。脳のパフォーマンス回復効果が見られることから、生産性向上が期待できるとして、現在海外を含めさまざまな企業が導入しはじめている注目の取り組みです。

パワーナップの多様なメリットと、導入のポイント

脳のパフォーマンスが上がり、生産性の面からさまざまなメリットを享受できると考えられているパワーナップ。企業にとって利点の多い取り組みですが、導入する際には、「ただの昼寝」とならないよういくつかのポイントをおさえることが重要です。

パワーナップの多様なメリット

パワーナップを導入することで、疲労回復効果が得られ、そこからパフォーマンス向上が期待できるといわれています。朝から頭をフル回転させていると、自覚がなくても脳に多くの疲労が溜まるため、午後にはパフォーマンスが低下してしまう社員も多いでしょう。パワーナップを導入することで疲労が軽減し、集中力や業務パフォーマンスを回復させることができます。

あわせて、パワーナップは疲労回復にともなうリフレッシュ感を得られることから、ストレス軽減にも役立ちます。これは社員の企業満足度にも効果があるでしょう。ストレスや疲労回復は社員の精神的な満足度を高めてくれて、「健康的に働ける」など自社に対する働きやすさを感じられるようになると考えられます。

 

 

また、昼食後は血糖値の上昇で眠気に襲われやすい傾向にあります。そのため昼食後に仮眠を取ることは、体内リズムの観点からも最適であるといえるでしょう。

実際に、パワーナップがパフォーマンス向上につながった研究データがあります。NASA(アメリカ航空宇宙局)では30年近くにわたってNASANapsという睡眠研究を行っており、この実験によると昼に30分近くの仮眠を行うことで、認知能力や注意力が向上したという結果が出ているそうです。

さまざまなメリットがあり、社員の働き方向上が期待できるパワーナップ。導入の際には、業務に支障が出ないよういくつかのポイントをおさえておきましょう。

パワーナップを導入する際のポイント1:時間や場所のルールを設ける

パワーナップ導入においてまず決めておきたいのは、実施時間や場所などのルールです。

あらゆる社員が自由な時間帯で睡眠を取ってしまうと、業務に支障が生じる可能性があります。そのため、パワーナップを行ってもよい時間帯を設け、その時間内であればいつでも行ってもよいというような形で、利用幅を自由に設定しましょう。

また、パワーナップの効果を十分に得られるように、睡眠時間の上限を設定することも有効です。仮眠する時間は15〜30分が最適とされており、それ以上寝てしまうと眠りが深くなり起きてからの集中力が低下してしまうといわれています。

あわせて、パワーナップを行う場所にも気を配らなければいけません。睡眠を取るスペースは、各社員が落ち着くスポットで行ってもらえるよう、ある程度は自由に設定してもよいでしょう。パワーナップ専用のスペースを開放したり、各自のデスクや車の中で睡眠を取ったりなど、いくつかの選択肢の中で自由に場所を選べるようなやり方を導入してみてください。

パワーナップを導入する際のポイント2:業務をフォローし合える仕組みを作る

社員がパワーナップを行うにあたり、もし支障が出そうな業務があれば、事前に対応方法を策定しておくことも重要です。たとえば、パワーナップ中の社員に電話がかかってきた場合に、他の社員がスムーズにフォローできるよう「どのような対応をすべきか」を決めておくなどが考えられます。

企業ごとに、導入にあたって検討しなければいけない要素は他にも出てくるでしょう。ここで紹介したポイントを参考に、自社にあったパワーナップ制度の運用方法をぜひ検討してみてください。

さまざまなパワーナップの企業導入事例

生産性向上のためのパワーナップは海外を含めさまざまな企業で導入されています。実際、どのような内容で導入されどのような効果が見られているのか、いくつかの事例をご紹介します。

会議室を昼寝スペースとして活用

インターネット事業を展開する国内のある大手企業では、頭をリフレッシュさせ業務効率や生産性向上につながるよう、パワーナップ環境を整えています。会議室を平日昼間の一定時間に「昼寝スペース」として解放し、時間内であれば誰でも気軽に最大30分間の昼寝が取れるようなルールを設けているようです。

同社ではアナウンスを積極的に行うことで制度を社員に浸透させる取り組みも行っています。効果については、導入後、午後からの業務パフォーマンス向上を感じる社員が多いようです。

医療従事者向けのパワーナップも

パワーナップは、オフィスだけでなく病院でも導入されています。ある病院では生産性の向上やウェルビーイングを目的に、院内にパワーナップスペースを設置しています。スペースには快適な寝心地につながるよう、高品質のマットレスが用意されているそうです。

病院にパワーナップを取り入れることにより、院内で働くすべての職員が本来の業務に注力でき、生産性の向上だけでなく重大なインシデントリスクの抑制にも繋げているようです。

海外でも広がっているパワーナップ

パワーナップによる効果は海外でも注目されており、アメリカやドイツ、オーストラリアなどさまざまな国の企業で広く導入されています。たとえば人間工学に基づいた形状のパワーナップ専用の椅子を設置している企業や、オフィスのいたるところにパワーナップスペースを用意し、気分によって選ぶことができる取り組みを行っている企業が見られるようです。

さらに、短時間の睡眠でもスッキリとよい目覚めを得られるよう、オフィスに木の素材で作られた個室を設けている事例もあります。

オフィスの共用部を活用したパワーナップ

最近では大型オフィスビルの共用部に仮眠室を設ける例もあります。

東京建物が推進する東京駅前八重洲一丁目東B地区市街地再開発事業でも、オフィステナントが利用可能な共用の仮眠室・瞑想室を用意する予定です。今後は、このようにビルの共用施設をうまく利用しながら、パワーナップに取り組むワーカーも増えてくるのではないでしょうか。

まとめ

睡眠が生産性に与えている影響は非常に大きいといわれており、睡眠に関する問題を解決するためにパワーナップが多くの企業で採用されています。

パワーナップを導入することで、社員の集中力アップや疲労軽減効果、ストレス軽減などにつながり、パフォーマンス向上が期待できます。日本だけでなく海外でも導入されているパワーナップで、企業の課題解決に取り組んでみてはいかがでしょうか?

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