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社員食堂と聞いてどのようなイメージが浮かぶでしょうか。郊外のオフィスや工場などでは、近隣に食事を取れる施設が少なく、社員食堂を置いている企業も珍しくありません。一方で都市部のオフィスでは、賃貸オフィスが多いこともあり、「社食を利用したことがない」という人も多いようです。最近では、ウェルビーイング、健康経営の観点からも、従業員の働きやすさに貢献する福利厚生の視点からも、「社員食堂」が見直されています。今回は、そんな社員食堂のメリットやデメリット、導入の形、最近注目される社員食堂について紹介します。
社員食堂のメリットとデメリット
社員食堂というと「安かろう、まずかろう」という印象を持つ方がいるかもしれません。しかし、最近ではそういった社員食堂はむしろ少数派かもしれません。健康計測機器の製造で有名なタニタの社員食堂が話題になったのは、2009年のことです。カロリーを抑え、塩分にも気を配った健康的なメニューの社員食堂ということで注目を集め、レシピ本がベストセラーにもなりました。
このタニタの社員食堂が注目を集めた背景には、「健康経営、従業員の健康への配慮」という社会的な課題に関連すること、「従来の社員食堂のイメージ」とのギャップが大きかったことがあるのではないでしょうか。このころから、社員食堂に対する意識が少しずつ変化しているようにも感じられます。
実際に、社員食堂には次のようなメリットがあります。
社員食堂のメリット 企業目線
●従業員の健康管理、健康増進に貢献できる
社員食堂で健康的なメニューを提供することで、従業員の健康管理に貢献できます。
●従業員の満足度向上、福利厚生の充実
社員食堂は、従業員の満足度にも貢献します。採用時のアピールポイントの一つにもなります。
●社員同士のコミュニケーション活性化
「社員食堂」という場があることで、他部署とのコミュニケーションも活性化するでしょう。そこでの会話から新たなアイデア、課題解決のきっかけが生まれる可能性もあります。社員食堂は、ただ食事を提供するだけではなく、「コミュニケーションの場」にもなり得るのです。
また従業員にとってもメリットがあります。
社員食堂のメリット 従業員編
●健康増進につながる
外食中心ではどうしても栄養が偏りがち、カロリー過多になりがちです。社員食堂で健康に配慮したメニューを提供すれば、その心配は軽減されるでしょう。
●休憩時間の確保
昼休みに外に食事に出掛けるとどうしても移動時間がかかってしまいます。社員食堂では、移動時間は抑えられ、十分な休憩時間を確保できるでしょう。
●食事代が抑えられる可能性がある
福利厚生の一貫として社員食堂に対して会社がコスト負担しているケースでは、一般的な飲食店よりも価格が抑えめになっています。そのため、外食するよりも食事コストが抑えられるケースがあります。
一方で、社員食堂にはデメリットも存在します。
社員食堂のデメリット
●導入、運営コストがかかる
社員食堂を運営するには、「社員食堂や厨房などのスペース」「厨房設備機器の購入と設置」といった設備面での投資、食堂運営に関わる人員の人件費、食材費や水道光熱費などの原価がかかります。ここを過度に抑えると「おいしくない社食」になり、社員から敬遠されることになりがちです。また、設備機器は定期的にメンテナンス、更新が必要なこともポイントになります。
●メニューの改定・改善が必要
いつも同じメニューを提供することは、満足度の低下に繋がる可能性が高いため、定期的なメニュー改定・改善が必要です。満足度の高い食堂とするためには、健康、アレルギーなどに配慮したメニュー、多様な文化に対応したメニューもが求められる場合もあるでしょう。
●法律上の課題を解決する必要がある
社員食堂の導入にあたっては、食品衛生法、健康増進法などの法令に従う必要があります。食品衛生法に基づいた飲食店の営業許可申請、健康増進法に基づく申請が必要であり、地域の保健所に申請しなければなりません。
社員食堂のさまざまな形態
社員食堂を導入したいとなった場合、現実的には「飲食店の運営ノウハウ」に近いものが求められます。一からすべてを社内で賄うことは難しいかもしれません。そこで、社員食堂の運用形態を知り、自社にあった形を考える必要があります。
一般的な社員食堂
いわゆる「社員食堂」であり、オフィスの一角に厨房と食事スペースを確保、食事を提供していきます。運用方式は2つのパターンに分類できます。
- 直営方式
栄養士や調理師をはじめ、社員食堂運営に必要な人材を雇用し、メニューや食堂のレイアウト、価格、すべてを自社内で賄います。コストもリソースも求められますが、自社が求める社員食堂を自由に運用することが可能です。食堂運営の関連会社を設立する「準直営方式」もあります。
- 外部委託方式
社員食堂運営の一切を外部の会社に委託する方式です。必要な人材やメニュー開発、食材の調達など、一切の食堂運営を任せることが可能です。食堂と厨房さえ用意すれば社員食堂運営が可能です。最近ではさまざまな要望に応える企業が増えており、十分な食堂スペースがない企業では、弁当スタイルでの食事の提供などといったスタイルにも対応できるようです。
また、厨房スペースが取れないと言った事情があるオフィスでは次のような形で「従業員の食事」に配慮しているケースもあります。
設置型
主食や惣菜、軽食などをオフィスに設置した冷蔵庫を活用して提供するスタイルです。メニューなどに制限はありますが、提供時間の自由度が高いなどのメリットもあります。厨房などの大掛かりな設備は不要、休憩時間が一定ではない、シフト制など多様な勤務形態がある企業などでは、活用例が多いようです。無人コンビニ、自動販売機が設置されるケースもあります。
デリバリー型
近隣の飲食店や宅配専門店と契約し、弁当などをデリバリーしてもらうサービス形態です。最近では健康に特化したお弁当のデリバリーのサービスなど多様化しています。飲食店の料理をオフィスで食べられるメリットはありますが、店によって提供数や時間に限りがあることがあります。決められた時間までに注文しておく必要があることも課題と言えます。
提供、出張型
オフィスの一角などを利用して、お弁当やランチプレート、丼ものなどを提供してもらうサービスです。フードトラックなどがオフィスに来ていることをイメージしてもらうとわかりやすいでしょう。大掛かりな設備がなくても、多彩なメニューを提供することが可能です。
チケット制、代行サービス
従業員に対して、食事代をチケットや電子マネーで提供、補助するサービスです。チェーン店などで活用できる場合、コンビニでも使用できる場合など、サービスによって利用可能店舗は異なります。外出が多い、出張が多い、テレワークが多い従業員には便利なサービスです。
テナントで共用できる“社食”があるオフィスビルも
社員食堂を導入したい場合、大きなネックの一つが、スペースの問題になります。特に、賃貸オフィスの場合、そもそもオフィスフロアでの厨房スペースの設置が困難なケースも多く、「賃貸オフィスだから社員食堂は設けられない」という認識になるケースも少なくないでしょう。前述のように、社員食堂型以外なら、社食サービスは賃貸オフィスでも導入は可能です。それに加えて、最近のオフィスビルでは「テナント企業が利用可能な、共同社員食堂」を用意しているところも増えてきています。
八重洲の再開発でも、共用社食があるオフィスビルを建設中
東京建物が再開発組合の一員として参画している「TOFROM YAESU TOWER」でも、オフィス入居者向けのウェルビーイングフロアをビルの13階1フロア約800坪全てと41階に設け、13階については社員食堂を導入します。キリンホールディングスとの協業による免疫ケアフードメニューの提供、日本各地の郷土料理やこだわりの調味料を提供するなど、従来の社員食堂とは一線を画したサービスになる予定です。
いま、働き方改革が叫ばれる中で、「職場環境の充実」、「健康経営の推進」は企業にとって不可欠な取り組みです。人の健康に大きく影響する「食事」について、従業員に対して企業が責任を持って配慮していくことも必要です。社員食堂はその一つの形だと言えるでしょう。
【参考資料】
東京駅直結、国家戦略特区の大規模複合再開発 東京駅前八重洲一丁目東地区第一種市街地再開発事業(A地区・B地区) 街区名称を「TOFROM YAESU」に決定 | 東京建物株式会社
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