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昨今、オフィスビルの環境認証は、大手不動産の新規建築物を中心に導入が加速してきています。環境認証は建築物そのものだけでなく、そこに入居する企業にとっても大事な要素。とくに企業ブランディングの観点から、環境認証を取得したオフィスに入居するメリットは大きいです。
今回は環境認証の重要性を説明するとともに、具体的な各種環境認証の概要について、わかりやすく紹介していきます。

環境認証とは

はじめに、建築物の環境認証とは何なのか、認証が増えてきている理由と合わせて解説していきます。

環境認証とは何?

建物の環境性能や省エネルギーかどうか、実際に建物を利用する人の快適性や健康性などが一定基準をクリアしていることを、第三者の専門機関が評価し認証したことを示す制度です。

環境認証制度には、環境性能全般を評価するもの、エネルギー性能や快適性・健康性に特化して評価するものなど、国内外に複数あります。

環境認証が強く注目されるようになったのは、2015(平成27)年に国連でSDGsが採択されたことがきっかけです。地球温暖化防止のために、社会全体で対策を行うことが求められるようになりました。

環境認証の取得が増えてきている理由とは?

2015年の国連でのSDGs採択以降、世界ではESG投資(環境、社会、ガバナンスへの投資)への関心が急激に高まりました。投資家が投資判断をする際に、対象企業が環境や社会活動にどれほど取り組んでいるかを重要視するようになったのです。

しかし環境や社会活動への取り組みは、事業活動による財務情報と違い可視化しにくいデメリットがあります。そこで、環境認証というわかりやすい基準が設けられるようになりました。

環境認証の重要性

具体的に環境認証が重視されてきている理由として、下記2つが挙げられます。

  • 機関投資家は企業のESG経営への取り組みを見ている
  • 環境認証を取得しているオフィスビルには、価値の高い企業が集まる

機関投資家は企業のESG経営への取り組みを見ている

先述の通り、世界ではESG投資への関心が高まってきています。

J-REITの資料(https://www.jstage.jst.go.jp/article/shasetaikai/2019.10/0/2019.10_253/_pdf/-char/ja)によると、全世界の資産運用残高のうち約30%は、ESG要素について考えた上で投資されていることがわかります。とくにヨーロッパでは、約60%と高い比率を獲得。

また三井住友信託銀行と三井住友トラスト基礎研究所の調査によると、既存のオフィスビルが環境認証を取得したところ、賃料が平均4.6%上がっていました。

出典:『不動産の環境認証の取得状況および経済価値の調査』の実施についてhttps://www.smtb.jp/-/media/tb/about/corporate/release/pdf/220720.pdf

賃料が高くても環境認証を取得しているオフィスビルにはそれだけの価値がある、と考える企業が多いことがわかります。

環境認証を取得しているオフィスビルには、価値の高い企業が集まる

ザイマックス不動産総合研究所の調査によると、環境認証を取得しているオフィスビルに入居している企業は、東京商工リサーチでの企業評点が高いという結果を得ています。

出典:環境不動産とビルマネジメント https://soken.xymax.co.jp/results/pdf/202108_3.pdf

企業評点とは「経営活動は健全か」「支払い能力の程度」「安全な取引が可能か」について第三者が評価する制度。健全で信頼のおける価値の高い企業ほど、環境認証を取得したオフィスビルへ入居していると捉えることができます。

認証一覧と各認証の違い

環境認証は国内外問わずさまざまな種類がありますが、主に下記6つを採用する建築物が多いです。

ひとくちに環境認証といえど、その中身はさまざま。環境への取り組みをどの観点から重視するかで、取得を狙う認証は変わってきます。

BELS

取得件数(23年7月時点)
非住宅用途:3873件
住宅用途:410,072件
複合用途:27件

BELSは、新築・既存を問わずオフィスビルなどの建築物の省エネルギー性能を評価する環境認証です。
国土交通省のガイドラインに則り、一般社団法人住宅性能評価・表示協会が創設しました。設計時点での省エネルギー性能を5段階で評価します。

eマーク

eマークは、オフィスビルなどの既存建築物の省エネルギー性能を表示する制度です。
正式には省エネ基準適合認定マークといいます。建築物省エネ法で定められている「建築物エネルギー消費性能基準」に適合していることを示すものです。
BELSのような段階評価は行わず、新築の建築物は対象外です。認定は都道府県、市または区が行います。

CASBEE

取得件数(23年8月時点)
建築評価認証:754件
戸建評価認証:279件
不動産評価認証:1393件
街区評価認証:7件
ウェルネスオフィス評価認証:107件

CASBEEは、総合的な環境性能を評価する環境認証です。
国土交通省の主導で開発され、一般社団法人日本サステナブル建築協会と一般財団法人建築環境・省エネルギー機構が管轄しています。
CASBEEの評価対象は建築物にとどまらず、都市や街区も5段階で評価します。

LEED

取得件数(23年7月時点)
Global:185,042件
→うちJapan:468件

LEEDは、総合的な環境性能を評価する環境認証です。
アメリカの非営利団体USGBCによって開発され、全世界で使用されています。CASBEEと同じく、評価対象は建築物だけでなく都市やコミュニティも含みます。評価基準と評価対象どちらも似ていますが、CASBEEが日本で生まれたのに対し、LEEDはアメリカ生まれかつ世界中で使用されていることから、よりグローバルな観点をもつ評価制度といえるでしょう。
こちらは4段階で評価します。

WELL

取得件数(23年7月時点)
Global:299件
→うちJapan:12件

WELLは、人間の健康性や快適性を評価する環境認証です。
評価対象はオフィスビルなどの建築物だけでなく、街区や空間も含まれます。3段階で評価します。

GRESB

評価対象(2022年)
リアルエステイト(不動産会社・ファンド):122者
インフラストラクチャー(インフラ会社・ファンド):6者

GRESBは、不動産会社や不動産ファンドのESGへの取り組みを評価する認証制度です。
ヨーロッパの主要年金グループが中心となって創設しました。企業のESGへの取り組みを評価する制度は多数ありますが、不動産業に特化しているのはGRESBだけとなります(2023年8月現在)。

まとめ

認証と言ってもさまざまな種類があり、どれを取得するか、考慮するかで外部からの見え方も変わってきます。もしオフィス移転で環境認証を見る場合は、ぜひ各認証制度の中身も確認しておけるとよいでしょう。

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