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地震や台風などの自然災害や、コロナウイルス等のパンデミックなど、緊急事態はいつ起こるかわからないもの。リスクマネジメントとして、BCP対策が必要です。
しかし、BCP対策の重要性はわかっていても実際にどう策定すればよいか、よくわからないという人も多いのではないでしょうか。

本コラムでは、BCP対策として、策定フローや運用ポイントなどの基本情報を解説します。

BCP対策の目的と必要性

BCPとは、Business Continuity Planの略です。日本語では「事業継続計画」といいます。自然災害などの緊急事態発生時に通常の事業活動が停止してしまうケースを想定し、

  • いかに事業を継続するか
  • どうやって事業を復旧させるか

を計画する取り組みのことです。BCP対策は義務ではありませんが、コロナウイルスといった大規模なパンデミックの経験から、重要性が高まってきています。

BCPを策定することで、主に以下のメリットを得られます。

  • 社員を守れる
  • 中核事業継続と早期復旧

社員を守れる

企業には社員を守る義務があります。これは、労働契約法第5条における安全配慮義務のことです。もし被災しても、復旧計画を立てておけば、社員の安全を守れます。さらには、社員の雇用も守れます。
事業の継続に、人材は欠かせません。緊急事態が起こっても社員の命と雇用を守ることは、何よりも大切です。

また企業は地域社会の一員として、一定の社会的責任を負って事業活動を行っています。BCPを策定しておけば、緊急事態発生時に、社員だけでなく周囲の人たちも守れます。

中核事業継続と早期復旧

そもそもBCPは「非常時に事業を継続させる」ことを目的に策定されます。

  • もし大規模なシステム障害が起こったら・・・
  • もしサプライチェーンの分断が起こったら・・・
  • もし大地震が起こったら・・・

これらの緊急事態はいつ起こるかわかりませんし、業務が停止してしまう可能性も高いです。BCPを策定しておけば、業務が停止してもすぐ復旧ができ、安心して事業を継続していけます。

出典:事業継続ガイドライン(令和5年3月)|内閣府 https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/pdf/guideline202303.pdf

BCP対策が必要な理由

とくに近年、緊急事態が増加傾向にあります。それに伴う事業縮小や倒産を回避するため、BCP対策の必要性が高まってきています。

緊急事態発生の増加に伴う倒産回避

日本では地震の頻度が上がり、また、台風や豪雨、噴火の発生なども増加傾向にあります。新型コロナウィルスによる世界的なパンデミックも起こりました。
BCP対策を行っていなかった場合、緊急事態発生時に何の対応もできず、事業縮小せざるを得なかったり、最悪のケースでは倒産してしまったりなどは十分起こり得ることです。

企業価値の向上

緊急事態発生時、BCP対策を運用することで、地域社会の一員としての責任を果たせます。そのことで、地域社会における会社の評判は上がるでしょう。また、BCP対策によって緊急時に事業を継続しサービスや製品などを提供できるのは、顧客や取引先にとってもありがたいことです。結果として、企業価値の向上につながるでしょう。

BCP対策の現状

帝国データバンクの「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2023年)」によると、BCP対策の現状は以下のとおりです。

またBCP対策済みの企業を企業規模で分けると、大企業は35.5%、中小企業15.3%でした。いずれにしてもBCP対策をしていない企業が多く、それが中小企業で顕著であるというのが現状です。

BCPを策定していない理由として「策定に必要 なスキル・ノウハウがない」が全体の42%を占めており、最も多い回答でした。
その他人材などのリソース不足も大きな要因の一つとして挙げられますが、企業規模に関わらず、スキルやノウハウの点からBCPを策定できていない企業が多いことがわかります。

BCP策定の流れ

必要性がわかったところで、「よし、BCPの策定を進めよう!」と思っても、そもそも何からはじめたらよいのかわからない企業も多いでしょう。
一般的にBCPは、下記のフローで策定されます。


策定にあたっては、はじめての人でもスムーズに取り組めるよう、経済産業省(中小企業庁)などが「BCP策定運用指針」といったテンプレートを公開しています。ぜひ活用してみるとよいでしょう。

ここからは、各フローでどのような事に取り組むのか、詳しく解説していきます。

1.BCP対策方針の策定

まずは、基本方針を策定します。基本方針では、主に以下について考えていきます。

  • BCP対策の目標
  • BCP策定プロジェクトの発足
  • BCP策定までのスケジュール
  • BCP策定後のスケジュール(社内でのBCP周知活動や事前対策活動など)

災害時に従業員を守るためなのか、社会的な責任のためなのか、取引先や協力会社への責任なのか・・・策定する前に必ず「なぜBCPを策定するのか?」をきちんと明確化しておくことが大切です。

2.自社の事業分析

次に、自社の事業の優先順位をつけていきます。順位は、売上高や停止した場合の損害額の高さなどから考えましょう。緊急時に重要度の高い事業からスムーズに復旧できるようにするためです。

優先順位が付け終わったら、中核事業における必要資源を洗い出します。以下の5項目を中心に洗い出してみましょう。

  • 人(社員)
  • 物(設備など)
  • 金(資金)
  • 情報(データなど)
  • 体制

さらに「緊急時にどの程度事業を継続させるか?」、復旧のレベル感を検討します。合わせて目標復旧時間も決めておけるとよりよいでしょう。

3.緊急事態による被害やリスクの分析

緊急事態というものは、規模感も、危険度のレベルもさまざまです。仮に大規模かつ危険度の高い事態が起こっても、重要な事業が最低限継続・復旧できるよう、緊急時のリスクについて分析をしておく必要があります。

4.BCP策定

策定目的や事業の洗い出し、リスク分析などの事前準備を経て、ようやくBCP策定を行います。
策定では、まず発生する可能性の高い緊急事態から見ていきましょう。発生可能性の高い事態が起こった際、中核事業に必要な資源をどのように調達・代替するかを考えていきます。先述した人・物・金・情報・体制の5項目を基準に検討していくのがおすすめです。
ここまでの内容をマニュアル化しておくことも忘れずに。

合わせて、BCPの発動基準と発動時の体制も決めていく必要があります。

5.事前対策

緊急事態が起こったときに備え、普段から行っておくべき事についても決めておきましょう。
たとえば、

  • 災害発生に備えてある程度の飲食料品を備蓄しておく
  • 機械が壊れた場合の代替機の手配を決めておく

などです。また、BCPの内容を社員に周知しておくことも重要。緊急事態発生時を想定した訓練まで取り組めておけるとベストです。

6.BCPの見直し

はじめて策定したBCPの場合、完璧とはいえないかもしれません。また時代が進めば新たな緊急事態が発現するかもしれません。それゆえ一度策定したBCPは、定期的に見直すことが大切です。経済産業省(中小企業庁)の定める「BCP策定運用指針(https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/contents/bcpgl_download.html)」では、大きな事業変化があればその都度、ない場合は一年ごとの見直しを推奨しています。

BCP運用にあたってのポイント、注意点

BCPは策定して終わりではなく、運用も非常に大切です。一通り策定ができたら、ぜひ以下のことに気をつけてみましょう。

  • BCP策定プロジェクトのメンバー構成を工夫する
  • 印刷した書面を保管する
  • 社内にBCPを定着させる
  • サプライチェーンや取引先のBCP対策を確認

策定プロジェクトのメンバー構成を工夫する

BCP策定には、さまざまな観点からの分析・検討が必要です。できるだけ全部署からメンバーを選定するとよいでしょう。また経営に大きく関わるため、できるだけ経営層にも出席してもらい、一緒に策定と運用を行っていけるとベストです。

印刷した書面を保管する

緊急事態発生時は、PCやサーバーが使えなくなる可能性があります。策定したBCPはデータ保管だけでなく、必ずプリントアウトし書面保管も行うようにしましょう。
念のため書面は複数用意し、それぞれ別の場所に保管しておけるとよりよいです。

社内にBCPを定着させる

経営層やプロジェクトメンバーが熱心にBCPを策定したとしても、メンバー以外の社員が内容を把握していなかったら元も子もありません。BCPを社内にしっかり周知できるよう、教育や訓練などの場を設けるようにしましょう。

サプライチェーンや取引先のBCP対策を確認

BCPは自社内だけでなく、関係企業にも効果が及ぶもの。それゆえ、自社の中核事業に密接な関わりがあるサプライチェーンや取引先などのBCP対策についても、きちんと確認しておきたいところです。内容次第では、自社のBCPを見直す必要が出る可能性もあります。
可能であれば、自社のBCPを策定する前に確認できるとスムーズです。

まとめ

自然災害による緊急事態の発生が多い日本において、BCP対策は優先度の高い、重要な取り組みです。義務ではありませんが、あるに越したことはなく、いざという時自社を守る盾となるでしょう。
策定にあたっては、経済産業省を中心にさまざまな企業・団体がテンプレートを用意していますので、ぜひ活用してみてください。

参考資料

経済産業省(中小企業庁)BCP策定運用指針 https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/contents/bcpgl_download.html

事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2023年) 帝国データバンクhttps://www.tdb-di.com/2023/06/sp20230626.pdf

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