文=岸本 章弘(ワークスケープ・ラボ代表) 写真提供=日本マイクロソフト株式会社
組織のつながりを強化する環境
新本社オフィスでは、組織内のつながりを柔軟で強いものにするための環境と道具の充実も図られています。“One Microsoft”のスローガンの下、事業部間の連携を強化し、全社一丸となって事業を推進していくためのオフィスづくりです。その施策の中心は、いつでもどこでもつながれるICTの仕組みと、フェイス・トゥ・フェイスの対話を促すための空間デザインを効果的に組み合わせていることです。
図2:Micosoft Lync の概要イメージ
情報通信環境の充実というのは、同社がICT企業であることを考えると当然かもしれません。統合コミュニケーション環境を提供するMicosoft Lyncと呼ばれるプラットフォームによって、Eメールや電話のやりとりから、スケジュール情報やプレゼンス情報の共有、オンライン会議まで、あらゆるコミュニケーションの道具がシームレスに連携されています。(図2)そのため、誰もが場所や時間にとらわれない働き方が可能になっています。
例えば、そばにいないチームメンバーのスケジュールをPC上で確認すると、在宅で仕事をしていることが分かり、プレゼンス情報を確認すると、電話してもいいことが分かる。その場で、画面をクリックするとIPフォンがダイヤルされ、相手につながる。電話越しに打合せしていると資料を見る必要が生じたので、手許のPC上で書類を開き、相手のPC上でもその画面を共有しながらその内容について話し合う・・・。これはほんの一例ですが、同社の情報環境はこうした働き方をオフィスの内でも外でもシームレスに支えてくれます。
ちなみに、3.11東日本大震災が起こったのは、同社が新オフィスに移転してから1ヶ月経った頃でした。それ以後、数日の間、都心の多くの企業が自宅待機などの対策をとっていましたが、同社でも85%の社員が在宅で特に問題なく仕事をしていたそうです。そうした勤務態勢に即時に対応できたことは、同社の情報通信環境の充実と、それらを日頃から使いこなしている社員のリテラシーをあらためて証明したと言えるでしょう。
それでは、それほどにICTを活用した柔軟なワークスタイルを実践している人々にとって、新しいオフィスの空間はどのような役割を果たしているのでしょうか。一言でいえば、柔軟な座席配置の仕組みと多様なコミュニケーション空間の提供が、業務効率の最適化とチームのつながりの強化を促しています。
デスクスペースにおいては、60%の社員がフリーアドレスになることによって、各人はそれぞれの役割・職種・業務の内容に応じて臨機応変に席を選ぶことができます。(写真7)テーブルスペースにおいても、コミュニケーションの用途に応じて選べるように、規模やプライバシーに配慮した多様な空間が用意されています。(写真8-10)
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写真7:オープンで歩き回りやすいレイアウトのデスクスペース。
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写真8:通路に面した会議室。
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写真9:面談などを考慮してプライバシーが保てる「フォーカスルーム」。
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写真10:個人集中作業やデスクトップ会議向きの「フォンブース」。