WORKSCAPE INNOVATION

働く風景を変えていくジャーナル。それが「WORKSCAPE INNOVATION」です。次世代オフィスのコンセプトの開発・研究に長年携わってこられた岸本章弘氏がお届けします。

No.05 組織を開くオフィス 2011.07.05 up

文および図・写真=岸本 章弘(ワークスケープ・ラボ代表)

自然に対して開かれたオフィス空間

緑の木陰でノートパソコンを開いてメールをチェックする社員。その向かいのパラソルの下では同僚たちが議論に熱中し、傍らの水盤の上ではアメンボが滑っている。文具・オフィス家具メーカーのコクヨが、2008年末に開設した「エコライブオフィス品川」では、日々こんな光景が見られます。

このオフィスは、省エネルギー設備の導入や環境を意識したワークスタイルの実践を通じて、環境配慮型のオフィスづくりを目指そうという実験オフィスです。LED照明器具やセンサー制御の空調設備といったハードウェアから、自然を身近に感じながら働くことでエコ意識の向上を促すような取り組みまで、さまざまな試行が行われています。(図1)

そんなオフィスの一部にあるのが、屋外空間で働くための「ガーデンオフィス」です。(写真1)開設からすでに2年以上が経っており、その間にさまざまな工夫がなされてきました。代表的なものとしては、「屋外で働く」ためのさまざまな道具やインフラが挙げられます。基本的にはノートパソコンを無線LANで繋ぐわけですが、明るい屋外のためのモニター画面の日除けや、長時間使えるバッテリーの工夫から、「ガーデンビズ」といった夏場の服装の検討まで、実に多様なアイデアが試されています。

  • 写真2:マウスパッドとして使っているのは、PC用のバッテリー。

    写真2:マウスパッドとして使っているのは、PC用のバッテリー。

  • 写真3:衣服の汚れを防ぐ、携帯クッション。

    写真3:衣服の汚れを防ぐ、携帯クッション。

  • 写真4:ガーデンオフィスへの入口脇に用意されたさまざまなガーデンワーク・グッズ。 クッション、膝掛け、バッテリー、ソーラーパネル電源から蚊取り線香立てまで揃っている。

    写真4:ガーデンオフィスへの入口脇に用意されたさまざまなガーデンワーク・グッズ。クッション、膝掛け、バッテリー、ソーラーパネル電源から蚊取り線香立てまで揃っている。

もう一つ特徴的なことは、このガーデンオフィスは「スタジオ」と呼ばれる屋内の多目的スペースとつながっているのですが(写真5-6)、そこが社内外の人々を巻き込んだ多様な活動の拠点になっていることです。このスタジオは普段はガーデンオフィスと一体でフリーアドレスの仕事場として機能していますが、もともと外部に向けたセミナーなどを開催できる空間としても設計されています。そんなユニークで開かれた空間を活用することで、社外のさまざまなワークショップ活動などに場を提供する「エコクリCafe」と名付けられたコミュニティが育ってきており、その活動の様子はソーシャルネットを通じて一般公開されています。(図2)

こうした活動は、ここで働いている社員に対して、さまざまなイベントを身近に感じながら、従来とは違った刺激を受けたり交流を広げたりといったきっかけを与えることにも貢献しています。このガーデンオフィスのあるフロアで働いている社員の多くは、商品や事業の研究開発に関わっているメンバーです。そんな彼らにとって、異分野の人々の活動に接して視野を広げる、さまざまな試作品を自ら使ってみる、外部の人の視点で意見をもらう、そしてそうした過程で新たな社外パートナーを見つける、といった活動を柔軟に支援してくれる場所があることは大きなメリットになっています。

  • 写真5:スタジオからガーデンオフィスを見る。

    写真5:スタジオからガーデンオフィスを見る。

  • 写真6:ガーデンオフィスからスタジオを見る。

    写真6:ガーデンオフィスからスタジオを見る。

  • 図2:エコでクリエイティブな「エコクリCafe」のフェイスブック・ページ。スタジオ内のイベントの様子が配信されている。

    図2:エコでクリエイティブな「エコクリCafe」のフェイスブック・ページ。スタジオ内のイベントの様子が配信されている。
    https://www.facebook.com/EcoKriCafe

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