目次

レンタルオフィス、コワーキングスペースといえば、コロナ禍では「オフィス、自宅に代わる“第三のワークスペース”」、つまりサードプレイスとして利用が拡大した印象があります。それ以前から長い歴史があるレンタルオフィスですが、コロナ禍を経たいま、企業はどのように活用しているのでしょうか。

レンタルオフィスの最新状況を、エキスパートオフィス株式会社 常務執行役員 営業本部長 井上浩司氏に伺いました。

 

令和の時代にレンタルオフィスは変化したのか?

そもそも、レンタルオフィスというビジネスの歴史は、短いものではありません。一般的なオフィスとは異なる「短期での利用が可能なレンタルオフィス」は、昔からある外資系レンタルオフィスのほか、オフィスビルの空きスペースをうまく活用し、起業間もない会社や、小規模企業、地方企業や中堅企業の支店などとして活用されていました。しかし、以前はあまり一般的ではなく、知名度も高いとは言えなかったようです。それがコロナ禍を経て、変化していると井上氏は語ります。

「コロナ禍によって出社が制限されていたという状況では、従来のレンタルオフィス需要は一時は減少しました。しかし、バーチャルオフィス(※1)の需要は高まったといえます。それまでレンタルオフィスを契約していた企業が、バーチャルオフィスに切り替えるケースが多かったように思います。しかし、それは一過的な現象で、現在はもとに戻っています。この数年で最も変わったのはレンタルオフィスの認知度と利用方法です」

井上氏によれば、コロナ禍以前、アメリカの大手レンタルオフィス企業が上陸したことで、それまでのレンタルオフィスのイメージが一新されたこと、メディアに大きく取り上げられ、認知度が向上したことが大きいといいます。

「それまでは、小さな企業、スタートアップ、一般的なオフィスを借りる信用、資金力不足の会社が使うという印象があったのですが、むしろ、急成長が期待されるスタートアップが活用する、企業間のコミュニケーションが活性化するなど、プラスの印象が強くなったと思います」

最近では、大企業が入居時・退去時も含めたコストメリットを勘案し、期間限定のプロジェクトのために「プロジェクトルーム」として、レンタルオフィスを活用することも、以前よりも増えている印象があるそうです。

 

※1 バーチャルオフィスとは、実際にお部屋(オフィス)を借りず、事業スタートに不可欠なオフィスの住所を借りることができるサービス。一等地の住所を利用した登記や、郵便物の受取、会議室利用、来客対応も出来るので、わずかな費用でオフィスを借りているのと同等の機能を利用することが可能。

コロナ禍を経て得られた「気づき」がオフィスのあり方に変化をもたらす

以前と異なり、多様な活用方法が認知されつつあるレンタルオフィスですが、その活用方法の広がり、企業にとって柔軟に活用できるメリットなどを反映させて「フレキシブルオフィス」と呼ぶことも増えています。

また、コロナ禍を経験したことで、オフィスに対する考え方が変わったケースもあると、井上氏は次のような事例を話してくれました。

「ある地方に大きな工場を持つ企業は、それまで工場と本社が隣接していました。地方の基幹都市から、少し離れた郊外に工場と本社があったのです。しかし、コロナ禍で出社制限をした際、工場は致し方ないながら、本社機能については基幹都市のレンタルオフィスに一時的に移転したのです。通勤時間を減らす、出社機会も減らすという意図だったと聞いています。

ところが、その状態で一年ほどやってみると、本社と工場が隣接しているメリットがあまりなかったことがわかったのです。また従業員の多くは基幹都市近辺に居住しており、通勤にも便利。取引先も頻繁に訪問しやすくなり、本社機能をもとに戻すメリットのほうが少なかったといいます。その企業はコロナ禍が終息したいまも、本社機能はそのままレンタルオフィスを活用しています」

この企業は、コロナ禍がなければ、いまのように基幹都市に本社機能を移転することはなかったでしょう。レンタルオフィスの活用は念頭になかった可能性もあります。

レンタルオフィスのメリットと留意点

レンタルオフィスについては、従来のオフィスと異なり、その柔軟性が大きなメリットだと言えます。井上氏によると、次のようなポイントが、レンタルオフィスのメリットとして考えられるそうです。

・初期コストが低い

・短期利用(半年~一年)も可能

・広さも柔軟に対応できる

・デスクなどの一般的なオフィス什器は備え付けられている

・ドリンクサービス、休憩室などのオフィスアメニティが揃っているケースが多い

また、一般的な不動産賃貸契約と異なり、入会契約となるケースがほとんどで、レンタルオフィスの運営企業により、その内容はさまざまです。基本的なオフィス什器が料金に含まれているところもあれば、別途料金が発生するケースもあります。ドリンクサービスや会議室の利用も、運営企業によって異なるのです。

レンタルオフィスが「オフィスビルの価値向上」を実現する時代

また最近ではレンタルオフィスについて、新たな流れも生まれつつあります。以前のレンタルオフィスは、雑居ビルを活用したものが多かったイメージがありますが、最近のレンタルオフィスでは、大型のオフィスビルに入居するケースも増えています。

実際に、東京都中野区の中野セントラルパーク、大阪市内の東京建物梅田ビル、名古屋市内の名古屋プライムセントラルタワーなどは、エキスパートオフィスが運営するレンタルオフィスが入居しています。

その特徴は、テナント企業が、同じビル内のエキスパートオフィスの施設を活用できることです。気分を変えて作業したい場合などに活用することが可能です。自社の足元にレンタルオフィスが入っていれば、短期間のプロジェクトルームとしての利用や、個室の都度利用もできます。このようにテナント企業がレンタルオフィスを活用できるようにすることで、オフィスビルとしての価値向上につながっています。

 

写真:エキスパートオフィス株式会社 常務執行役員 営業本部長 井上浩司氏(エキスパートオフィス東京ラウンジにて)

まとめ

エキスパートオフィス株式会社は、2012年よりレンタルオフィス事業をスタートし、2025年3月時点で14拠点を展開。今後も、テナント企業への利便性向上・ビル全体への付加価値向上も視野に入れたレンタルオフィスの展開をしていく予定のようで、エキスパートオフィスの最上位ブランド「EXEVIA(エグゼビア)」を2026年3月に、東京駅八重洲口前で建設中の大規模複合施設「TOFROM YAESU TOWER(トフロム ヤエス タワー)」内に「EXEVIA TOKYO YAESU(以下「本施設」)」として開業予定です。働き方改革の推進の大きな流れがあり、オフィスにも柔軟性が求められるようになったことが、レンタルオフィスの活用を加速させていると言えるでしょう。従来のオフィスに合わせた職場環境、働き方ではなく、働き方に合わせたフレキシブルなオフィスが求められています。これからは、うまく既存のオフィスとレンタルオフィスを使い分けていくことが求められるのです。

 

【参考資料】

エキスパートオフィスの最上位ブランド「EXEVIA」誕生第1号店「EXEVIA TOKYO YAESU」が東京駅前の大規模複合施設「TOFROM YAESU TOWER」内に2026年3月開業 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000107167.html

 

SHARE:

  • facebook
  • X
  • クリップボードにコピーしました

働き方改革で社員に貢献できる東京建物のオフィス