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普段何気なく使用しているオフィスには、複数の法律が関わっています。オフィス移転やレイアウト変更時には、これらの法律を考慮する必要があります。なかには、法律の制約で「希望するレイアウトが実現できない」可能性もあるため、注意が必要です。

今回は、意外と知られていない、「オフィスレイアウトに関わる3つの法律」をご紹介します。

オフィスレイアウトに関わる、押さえておくべき3つの法律

オフィスのレイアウトに関係する法律は、基本的に次の3種類です。これ以外にも細かいものはありますが、まずはこの3つを押さえておくといいでしょう。

建築基準法

生命の安全や健康の観点から建築物の構造や設備について最低基準を定めているのが建築基準法です。建物の構造に限らず、壁や天井、廊下、階段、出入り口に関連する防火・防災の規定が多く存在します。衛生面に関しても、換気、採光、石綿(アスベスト)の使用に関する規定があります。建物の構造等にかかる基準は、建築時にクリアされています。建築基準法がオフィスレイアウトに特に関連するのは、動線に関する部分です。

消防法

消防法は防災、特に火災への備えに関連する法律です。オフィスのレイアウト変更時にも、消防署への各種届出が必要となります。特に、会議室などの間仕切りを変更する際には注意が必要です。

労働安全衛生法

この法律は、働く環境を安全で衛生的に保つことを目的とした基準を定めています。細則として“事務所衛生基準規則”があり、オフィスデザイン時にはこの規則に従う必要があります。この法律では、作業空間の広さや照度など、快適かつ安全な作業環境の確保が求められています。

建築基準法のポイント 廊下の幅は「最低120cm以上」

建築基準法の規定の中で特にオフィスレイアウトに影響が大きい点は廊下の幅です。避難時にスムーズに人が移動できることが重視されています。

  • 両側に居室がある廊下・・・160㎝以上
  • その他の廊下    ・・・120㎝以上

同法では、上記の廊下の幅を最低基準としています。これはオフィスの床面積が100㎡以上の場合とされていますが、それ以下の面積の場合でも「すれ違いが想定される廊下の幅は120cm以上」を確保するといいでしょう。

この数値の参考となるのが、厚生労働白書における日本人の平均的な寸法です。令和元年の調査では、その横幅が「45~50cm」とされています。このサイズを考慮すると、幅120cmの廊下ではすれ違う際にやや圧迫感があり、160cmでようやく余裕があるというイメージになるでしょう。この廊下の幅の制限は、オフィス内のデスクの間隔などには適用されませんが、移動しやすいように参考にする必要はあるでしょう。

消防法のポイント 間仕切り・パーティションに注意

消防法でテナントにとってポイントになるのは、間仕切りやパーティションです。オフィスでは、これらで部屋を区切るケースがあります。すると、消防法に基づいて、届出の必要が発生し、スプリンクラーや火災感知器の設置が義務付けられます。よくオフィスの会議室などで、間仕切りで天井部分が空いているケースがありますが、それはこの消防法が関連している場合があります。天井部分が空いているとそこは区切られた部屋とはみなされないため、新たな設備が必要なくなるのです。

労働安全衛生法のポイント 空気の質と明るさに注意

労働安全衛生法は、働く環境を快適なものに維持することが目的です。具体的な基準として事務所衛生基準規則が定められています。その内容は多岐にわたりますが、中でも重要なポイントをご紹介します。

空気環境

まず、オフィスの環境として重視されているのが空気環境です。事務所衛生基準規則には、従業員一人あたりに必要な気積が定められています。「気積」は聞き慣れない言葉ですが、一人あたりにどれくらいの広さ空気の体積が確保されているかという考え方です。面積だけではなく空間の広さを考慮しているため、一般的なオフィスよりも天井が高い場合は、面積が多少狭くても大丈夫ということになります。基準値は、一人あたり10㎥。約2mおきに1人程度と考えると良いでしょう 。オフィスのレイアウトを考える場合の参考になる数値です。

照明

次に照明ですが、同法では照明基準として、以下の基準が定められています。

  • 一般的な事務作業・・・300㏓以上
  • 付随的な事務作業・・・150㏓以上

※付随的な事務作業とは、資料の袋詰め等、事務作業のうち、文字を読み込んだり資料を細かく識別したりする必要のないものが該当します。

単位はlx(ルクス)で、1㎡あたりの光の量になります。100lxだと暗めの間接照明の部屋、1000lxで屋外や明るいリビングくらいの明るさだとイメージすると良いでしょう。

さらに、同法では、「騒音」や「視線」といった集中を妨げるものの排除、立ち仕事や力仕事の場合は体をすぐに休められる設備の確保、疲労やストレスを軽減できる休憩スペースの設置も求めています。トイレや休憩室を清潔に保つことも重視されています。

まとめ

オフィスのレイアウトに関しては、注意すべきポイントが多数存在します。総務担当者がオフィスのレイアウト変更や移転にあたりすべてを把握する必要はありませんが、法令の内容を「おおまかに」でも理解しておくと、レイアウト計画の検討をより効率的に進めることができるでしょう。

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