WORKSCAPE INNOVATION

働く風景を変えていくジャーナル。それが「WORKSCAPE INNOVATION」です。次世代オフィスのコンセプトの開発・研究に長年携わってこられた岸本章弘氏がお届けします。

No.12 日本のオフィスのこれからを探る その2 2012.01.30 up!

<座談会>紺野登×玉井克彦×神河恭介 進行:橘昌邦

これからの日本のオフィス ~イノベーションを生むオフィス~

話をオフィスに戻したいと思いますが、今後日本において新しいオフィスづくりに取り組む企業が増えていくためには、企業自身の意識以外にどのようなことが必要だと思われますか。

紺野

これまで日本のオフィスは様々な制約が多く、自由度に欠けていました。例えばオフィス移転に際して既存の内装を壊して廃棄しなければならなくなったり、デスク単位で一人当たり何平米といった発想のために、検討された様々なアイデアが制約され、結局代わり映えしないオフィスになってしまったという話をよく耳にします。
そろそろオフィス空間を自由に変えられるような新しいオフィス賃貸の仕組みが出てきても良いのではないでしょうか。そのような入居者側のニーズをサポートできるようなしくみが出てくれば、日本においても様々なオフィスイノベーションが生まれてくると思います。

SOHOを中心とした小規模オフィスにおいてはここ10年、様々なスタイルが出てきたように感じますが、確かにそれらは比較的築年数が古く、利用に際しての制約が少ない物件が多いですね。大規模オフィスにおいても制約が少なくなれば、新たなスタイルのオフィスがもっと増えてくるのではないでしょうか。

  • クリエイター向けシェアオフィスREN-BASE UK01

    クリエイター向けシェアオフィス
    REN-BASE UK01

  • 車庫を改造したクリエイターのオフィスUT

    車庫を改造したクリエイターのオフィスUT

玉井

今すぐ不動産業界のビジネスモデルを変えるというのは難しいかもしれませんが、少しずつトライしていきたいですね。先にも述べましたが、中野セントラルパークはこれまでの枠に囚われない発想でオフィスレイアウトを考えられるという点で、新たなオフィスづくりの起点になれればと考えています。

神河

紺野先生はオフィスの成功事例の共通点はオフィスがビジネスモデルに適合していることだとおっしゃられましたが、ユニークなオフィスづくりが新たなビジネスモデルを誘発するということもあるかもしれませんね。その点では、最近日本でも設置され始めたフューチャーセンター(※2)は興味深いですね。

※2:ヨーロッパ発祥の、中長期的な課題解決を目指し、幅広く関係者が集まって対話する創造的な協業を目的とした施設。会議・研修スペースや学習スペース、ミーティングスペースなどにより構成される。

紺野

フューチャーセンターは欧州で生まれた新しいタイプのオフィス機能です。複雑化した現代の問題を解決していくためには、従来の閉じた企業の枠組みでは限界があることから、所属や立場の異なる多様な人々が参加し、問題に取り組むことのできるフューチャーセンターが生まれてきました。ここでは自由な発想が行えるよう、空間に様々な工夫がなされています。そういった空間がこれからのオフィスのひとつの顔になるといえます。
オランダで最も古い省庁である「運輸水利管理省」などは面白い例でしょうね。常にイノベーションが求められる機関であるため、部署横断型で考えられるフューチャーセンターが導入されたのです。日本ではまだ導入が始まったばかりですが、今後は増えていくのではないでしょうか。

  • オランダ運輸水利管理省のフューチャーセンター多様な人々が集まり、自由闊達な議論が行われている(写真:紺野 登)
  • オランダ運輸水利管理省のフューチャーセンター多様な人々が集まり、自由闊達な議論が行われている(写真:紺野 登)
  • オランダ運輸水利管理省のフューチャーセンター多様な人々が集まり、自由闊達な議論が行われている
    (写真:紺野 登)

玉井

いろいろお話を伺っていると、オフィス供給者である我々不動産業界が日本のビジネスにおいて担う役割は、実は非常に大きなものだということが分かりますね。

紺野

その通りだと思います。不動産業界はそのことを真摯に受け止め、新しいオフィスづくりに取り組んでいく必要があるのではないでしょうか。
そういった意味では、中野セントラルパークはこれからのオフィスのモデルになりうるプロジェクトだと言えるのではないでしょうか。中野セントラルパークの今後に期待しています。

  • 座談会風景(左から神河氏、玉井氏、紺野氏)

    座談会風景(左から神河氏、玉井氏、紺野氏)

今回は、オフィスに求められ始めている「新たな付加価値」の話から、その背景にあるビジネスにおける「都市間競争」の話へと大きく展開していきました。そして、日本のビジネスにおける「不動産業界が担う役割」の重要さを確認し、座談会は終了しました。

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