WORKSCAPE INNOVATION

働く風景を変えていくジャーナル。それが「WORKSCAPE INNOVATION」です。次世代オフィスのコンセプトの開発・研究に長年携わってこられた岸本章弘氏がお届けします。

No.12 日本のオフィスのこれからを探る その2 2012.01.30 up!

<座談会>紺野登×玉井克彦×神河恭介 進行:橘昌邦

都市間競争に勝ち抜く要件 ~「文化的な力」の重要性~

神河

都市の話に戻りますが、これまでビジネスは国単位で考えることが多かったように思います。それが都市単位で考えられるようになってきたと言われていますがそれには理由があるのでしょうか。

紺野

本当のグローバル化の単位は都市であり、今後、ビジネスにおいて都市の担う役割が増えていくと思われます。経済学の分野においても、都市を単位にした研究が増えてきているようです。
2010年に世界における都市人口が農村人口を超えました。これまで都市が2、3割で農村が7、8割という時代が続いていたのですが、それが逆転し、世界の過半が都市という時代になったのです。そのような中で世界のマーケットをとらえるためには、都市を基準に考える必要があり、その点でも都市の重要性が高まってきているように感じます。
単に地域のマネジメントという視点だけでなく、ビジネスにおいて、いかにイノベーションにつながっていくかという視点で都市を見る必要が出てきました。

玉井

  • サブカルチャーの殿堂「中野ブロードウェイ」

    サブカルチャーの殿堂
    「中野ブロードウェイ」

  • 参考書籍「クリエイティブ都市経済論」リチャード・フロリダ 著 日本評論社

    参考書籍
    「クリエイティブ都市経済論」
    リチャード・フロリダ 著
    日本評論社 2010

ビジネスや都市間競争において、アジアが力をつけてきていますよね。その中で今後、東京が勝ち残る要件というのはどのようなものだと思われますか。

紺野

それは世界最大のメガシティである東京が、江戸から持ち続けている街の文化、そして、それらを生み出してきた住民が持っている文化的な力だと思います。一見違うように感じるかもしれませんが、中野におけるサブカルチャーなども実はこのような文化的な力が背景にあると思います。
世界に目を向けてみると、ビジネスにおいて強いと言われている街の多くが、実はそのような文化的な力を有していることに気づくはずです。新興のビジネス都市の中には文化的な力が弱いのではと思われる都市が存在しますが、そのような都市は長期的に力を維持していくのは難しいのではないでしょうか。

神河

江戸とは興味深いですね。クリエイティブ・クラス(※1)の研究で知られる社会学者のリチャード・フロリダは、クリエイティブ都市経済論において、アメリカで経済が成長している都市の特徴として「技術」「才能」「寛容」を有している点をあげていますが、江戸はまさにそれらの要素を有した都市でしたよね。その背景には、成熟した町民文化が存在していたわけですが、それこそが東京の最大の強みということなのでしょうね。

※1:リチャード・フロリダが提唱した脱工業化した都市における経済成長の鍵となる社会経済学上の階級で、自らが作り出したクリエイティブな仕事でお金を稼ぐことのできる全国的、もしくは国際的レベルのワーカーたちを指す。

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