文=安田洋平(株式会社アンテナ)
中央線特有ののどかさも残る中野の街。
サブカルチャー、商店、居住……、
オフィスという色で染まっていない、
この街の多様性がワーカーにとっては
心地よい刺激となる。
オフィスの移転を検討なさっている方へ。候補地を検討する上では、いろんな方法論があるかと思いますが、今回はその物差しのひとつとして「時間距離」をご提案してみようと思います。
時間距離とは実際の距離のことではなく、交通機関を使った場合に同じ時間で辿り着くことのできる距離のことを言います。例えば、東京駅から同じように30分圏の場所であっても西に進むか東へ行くか、それとも北上するかで賃料も環境の良さも全然異なりますよね。そして、同じ時間なら快適な方がいい。「時間距離」でそうした比較を行ってみるわけです。
新宿を基点として、時間距離でシミュレーションをしてみましょう。この近辺でオフィスを借りるとしたら、中央線でその両隣りの駅は四谷か中野。時間距離はどちらも一緒です。でも、中央線を下るか上るのかにより、朝の通勤ストレスがより少ないのは果たしてどちらでしょう?
さらにこんなシミュレーションもしてみます。新宿駅で下車して、それなりに歩いて通う新宿副都心のオフィス街と、新宿駅よりひとつ先の中野駅まで乗って、駅近のオフィスに出社するのとでは時間距離はそんなに変わらないはず。でも前者の場合、途中の道のりは延々と続く地下道、後者は路面の商店街です。気持ちがいいのは?
これまで、オフィス立地としてあまり意識されてこなかった街、中野。でも、冷静に分析していくと、新宿から西に一駅って、意外に穴場なのではないか、そんな気がしてくるんです。しかも、商店、居住、サブカルチャー・・・、いろんな魅力が混在しているこの街は、刺激に満ちています。オフィス選びの至上命題がワーカーを生き生きとやる気にさせることだとするならば、あえて「新宿より1つ西」、通勤ストレスが少なく多様な表情を持つ、中野という選択肢、検討対象に入れてみては?