文=安田洋平(株式会社アンテナ)
オフィスからの窓からのこんな眺め。
想像してみてください。
公園ではさまざまな人の営みが自然体で行われており、人間の行動原理を知る良いヒントに満ちている。
もちろん窓から眺めるだけじゃなくて、自分たちもユーザー。
この気持ちよさを享受して。
(写真提供=NAKANO CENTRAL PARK)
仕事の能率が上がるときというのは、意外と余計な要素をシャットアウトした空間より、適度に雑音があったり目に飛び込んでくる風景に動きがあったりする空間にいるときではないでしょうか。だからこそあえて公園のベンチやカフェを使って作業をするワーカーも増えています。昔であれば “さぼる”ために立ち寄る場所のイメージだったかもしれませんが、いまや集中するために行く人も少なくはないのでは。
そして、オフィス内にいたならば、そうした適度な雑音や風景の変化を与えてくれる一番のものは「窓」でしょう。
想像してみてください。オフィスで仕事をしているとき、その大きな窓からは公園が眼下に見えている。その日の午後までに準備しておかなければならないプレゼン資料があって朝早めに出社したとき、ふと見やれば、ランニングをしている30~40代くらいの人がいる。朝の犬の散歩にやってきたおじいさんがいる。
昼、ランチタイムを終えて午後のデスクワークをはじめ、黙々とパソコンのキーを叩く音ばかりがオフィスに響きわたる。そんなとき、視線をモニターから窓へと移せば、木陰で本を読む若者の姿が目に飛び込んでくる。近所のお母さん同士だろうか、ベビーカーを脇に停めて芝の上で語らう人たちがいる。学校が終わった小中学生、講義のコマがたまたまなくてぶらぶらしている大学生なども。それぞれのスタイルで公園で過ごしたり、また通り過ぎたりしている。
夕刻、そろそろ仕事を切り上げる時間。ノートパソコンを閉じて窓の外を見ればデッキのところに人だかりがあり、笑いあっているのが見える。さあ、われわれも下のお店で一杯やるか。この季節、やはり外を眺めながら飲むのが最高だ。
窓ガラスにはいつも人の営みやその街のコミュニティの像がスクリーンのように映し出されています。そして公園は老若男女から外国人まであらゆる生活者が滞在したり通過するジャンクション。これからのものづくりをする我々はこの風景から気持ちよさだけでなく、刺激を受けてつくるべきモノやコトのヒントをも得ることでしょう。文字通り、窓は世界とつながっています。