文=安田洋平(株式会社アンテナ)
「藤村龍至建築設計事務所」代表
藤村龍至さん。
プロセス模型。意見が取り入れられるたびに、それがどういうカタチになるかが目に見える。
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藤村さんが手がけたショップの内装。使い手の意見を吸収してこのデザインに行き着いた。
(撮影=koichi torimura)
「オフィスってどうやってレイアウトすればいいの?」。これからのオフィスデザインについて、今回は、藤村龍至建築設計事務所・藤村龍至さんが主に住宅や店舗の設計のときに採っている手法を参考まで伺ってみました。
「とにかく私たちはたくさん『プロセス』の模型をつくるのです。1回のミーティングごとに、議事録のように、そこで出た新たな意見や課題を模型にして共有できるようにする。最終的に完成形が決まるまでに30個も40個も模型ができることもあります。一見手間が掛かるようですが、依頼する側も、設計する側もどんどん考えが整理されていくので、かえって効率がいいのです」
なぜそんな方法に?
「まちづくりの手法からヒントを得たものなのです。まちづくりってワークショップ的な決め方でみんなの意見が入ってつくられるボトムアップ型じゃないですか。コミュニケーションがうまくいかないと独りよがりな提案になってしまうこともあると思うのですが、この方法に従ってひとつひとつブレイクダウンすれば、みんなの考えをクリアにして、実際のかたちとして積み上がっていくのを都度実感することができるので誰にでもわかりやすい」
結果的に、設計過程における施主のコミットの度合いも高くなるので、出来上がったときの満足度も全般的に高いといいます。
同じような手法を使われたことは?
「オフィスの設計でこの手法を活かせた実例はまだあまりないのです。オフィス移転に際して、あまりオフィスをデザインする時間をじっくりかけられないことが多いとは思いますが、オフィスをこうした『セッション』型で現場のワーカーさんたちの意見を掬い上げながら空間づくりしていくと、ニーズもクリアになって、より生産的な場所にすることが出来ると思います」
- 藤村龍至建築設計事務所
http://www.ryujifujimura.jp/
写真提供= (藤村龍至建築設計事務所)