WORKSCAPE INNOVATION

働く風景を変えていくジャーナル。それが「WORKSCAPE INNOVATION」です。次世代オフィスのコンセプトの開発・研究に長年携わってこられた岸本章弘氏がお届けします。

No.03 高度化するオフィスの役割と機能 2011.05.23 up

文および図・写真=岸本 章弘(ワークスケープ・ラボ代表)

街を活用するオフィス戦略

  • 写真3:64 Knightsbridgeの外観(右手前の建物)

    写真3:64 Knightsbridgeの外観(右手前の建物)

  • 写真4:64 Knightsbridgeの受付とロビーエリア

    写真4:64 Knightsbridgeの受付とロビーエリア

  • 写真5:入居する小規模テナントのオフィス内観

    写真5:入居する小規模テナントのオフィス内観

これからのオフィスは単なる作業場所の集合体ではありません。知的創造活動のための拠点です。そこには、さまざまな人々との対話や、感性を刺激するモノやコトが不可欠であり、多様な活動を支援する機能やサービスが必要です。そんなニーズに応えられる施設は、都市には多く存在します。だから、それらをオフィス戦略の一部に取り込めれば、もっと多様性のある豊かな環境ができるでしょう。

そうしたアウトソーシング先として活用できる街の施設の代表格といえばやはりホテルでしょうか。レストランやラウンジから、会議室やバンケット施設、場合によってはコンベンション施設まで、多様な対話やイベントを支える快適な空間とサービスを抱えています。

具体的な事例を見てみましょう。ロンドンのビジネス街、ナイツブリッジ地区にある小規模なサービスオフィス64 Knightsbridgeです。写真3の右手前側に見えるグレーの石張りの建物がその拠点ですが、ここに入居するテナントは、隣接するマンダリン・オリエンタル・ホテル(左奥の煉瓦造りの建物)のサービスを利用することができます。ホテルと業務提携し、コンシェルジェやビジネスサポートから、クリーニングや食事のルームサービスまで、ゲストと同じ感覚で利用できるようになっているわけです。

別のタイプの施設としては、学校などとの組合せも有効かもしれません。特に研究開発に関わる組織にとっては、多様な分野の専門家との産学協同の活動などは有効でしょう。あるいは、若い学生や研究者達に向けて、自社の製品や活動を身近に提示できる場があれば、企業のブランディングや将来的な人材獲得戦略にも活かせそうです。

写真6~8はコペンハーゲンにあるIT Universityとその中にオフィスを構えるInnovation Labです。この会社は、IT分野を中心に新しい技術をスカウトし、そのプロトタイプの開発やプロモーションを通じて実用化を手助けしています。そんな彼らが、IT系の人材や業界関係者が多く集まる大学の一画に、プロトタイプの展示とデモンストレーションのためのオフィスを構えています。新しいアイデアを世に広め、それらを理解できる人々からフィードバックを得ながら、ビジネス化に向けてパートナーを探し出す、といった活動の拠点として相応しい場所になっているようです。

  • 写真6:IT Universityのメインアトリウムの一画にオフィスがある。

    写真6:IT Universityのメインアトリウムの一画にオフィスがある。

  • 写真7:来訪者を迎える開放的でユニークなインテリア。

    写真7:来訪者を迎える開放的でユニークなインテリア。

  • 写真8:さまざまなプロトタイプの展示エリア。

    写真8:さまざまなプロトタイプの展示エリア。

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